X線光電子分光分析装置(XPS、ESCA)

概要

原理

特定のエネルギーを有したX線(hν)を物質表面に照射し、そこから放出された光電子の運動エネルギー(EKIN)を測定し、その電子が原子に束縛されていた結合エネルギー(EB)を求める。

EB=hν-EKIN-φ

この結合エネルギー値は原子固有であり、さらに原子の結合状態によりわずかに変動する(化学シフト)。また光電子の強度はその原子の濃度と比例しているため、元素の同定、結合状態の推定、構成元素の比率を求めることが可能である。

装置:アルバック・ファイ

写真1 装置:アルバック・ファイ

適用分野

金属、半導体、無機、有機、高分子など全ての材料の表面分析

特徴

  • 検出可能元素

    Li以降の全元素

  • 検出下限

    0.1~1原子%(元素により異なるが、一般に原子番号の大きい元素の感度が高い)

  • X線ビーム径

    最小9μmφ(従来のXPSでは数mmであったが、当社ではμ-ESCA{図1}を使用しているためX線ビーム径を絞ることが可能。→試料の狭い領域のみの分析が可能)

  • エネルギー分解能

    最高0.5eV(Ag3d5/2)→高分解能状態分析が可能{図2}

  • 深さ方向分析

    1nm/min~50nm/min程度まで任意のピッチで測定可能

  • 絶縁物分析

    容易

  • マッピング分析

    可能

装置例

  • メーカ

    アルバック・ファイ株式会社

  • 型式

    Quantera SXM

  • ビーム径

    最小9μmφ、通常100~200μmφ

  • Ar+イオンガン

    0.1~5keV

  • スパッタ速度

    1nm/min~50nm/min

  • 真空度

    6.7x10-8Pa

PETの高分解能状態分析

図2 PETの高分解能状態分析