顕微フーリエ変換赤外分光光度計 (μ-FT-IR)

概要

原理

化合物を構成している元素の振動は元素の種類や結合状態によって変化します。従って、化合物の振動は化合物固有の波長を持つ振動の組み合わせになります。この振動を検出する装置が赤外分光光度計です。

装置の概要は下図に示すように光源から出た光(赤外線)は干渉計で各周波数毎に変調された合成波になります(インターフェログラム)。この光を試料に当て、試料によって吸収された光を検出します。この光をAD変換後コンピュータでフーリエ変換することで、周波数毎のスペクトルが得られます。FT-IRは高感度、短時間の測定が可能、S/S比の高いスペクトルが得られる、波数の精度が高い等の特徴があります。

更に試料に当てる光を細く絞ることが出来るので、微小領域の測定が可能になります(顕微、μ)。

顕微フーリエ変換赤外分光光度計 装置概要

装置概要(JEOLのHPより)

装置概要

装置概要(JEOLのHPより)

顕微フーリエ変換赤外分光光度計

適用分野

  • 各種有機材料の種別や官能基の判定
  • 有機材料の表面分析 (劣化・変質・付着異物調査)
  • 有機化合物の分子構造解析
  • 化合物の分布像

仕様

  • 測定波数範囲

    中赤外 7800~350cm-1(KBrビームスプリッター)

    近赤外 14700~2000cm-1(CaF2ビームスプリッター)

    *) 7800~350cm-1(ATRモード)

  • 最高分解能

    中赤外 0.4 cm-1

    近赤外 1.0 cm-1

  • SN比

    中赤外 55000:1

    (分解能4cm-1、1分間積算、2200cm-1 近傍P-P値)

    近赤外 <10μAbs 1分間16cm-1

  • アクセサリー

    ・ユニバーサルATR

    クリスタルにダイヤモンドを用いているため、傷がつきにくく、固体・液体・粉体など広範囲のサンプルに使用できます。

    ・加熱拡散反射

    温度範囲:室温~900℃、到達真空度:1.33×10-4Pa

    ・高感度反射

    入射角:75o、窓板:ZnSe

    ・卓上傾斜切削機

    傾斜切削角度:0.2~10.0o (0.2o刻みで任意設定)

    バイト:単結晶ダイヤバイト

    適用試料:プラスチック、樹脂、複合材料(一部の金属、セラミックも可能)

測定例

事例1; ラミネートフィルムのATRイメージング

  • ラミネートフィルムの分析例

    ラミネートフィルムの分析例

  • 100μm幅のラミネートフィルムをATRイメージングで測定した結果です。

    4μm~20μm幅の8層を完全分離し、定性できました。

事例2;未知ポリマーの定性分析

ポリ塩化ビニルでは、可塑剤の充填量が多く定性が困難であるが、差スペクトル法を用いることにより容易に定性が可能である。

分析事例

  • 試料を直接測定した赤外吸収スペクトル(透過法)

    試料を直接測定した赤外吸収スペクトル(透過法)

    差スペクトル法

    差スペクトル法を用いて処理を行った赤外吸収スペクトルと標準ポリ塩化ビニルの重ね書き試料に赤外線を照射し、分子固有の振動数に応じた赤外線吸収スペクトルから有機物の構造を推定