X線CTを用いてAl溶接部内のボイドや接合不良部などの欠 陥を3次元観察し、それぞれの欠陥体積を計測した事例を紹介いたします。
マイクロフォーカスX線CTは、材料にX線を色々な角度から照射し、透過像を撮影して、材料中の空隙や異物などの位置や大きさを、非破壊で3次元的に知ることができる装置です。
微小焦点(4μmφ)のX線源からコーンビーム状に放出された白色X線を、ゴニオメーターで360度回転する測定試料に照射します。
2次元X線検出器を用い、各角度で撮影された多数のX線透過像を数学的に再構成して、X線CT(断層)像にします。
マイクロフォーカスX線CTの外観
ホーム掲載
装置構成図
装置内部 (装置正面のドアから見た内部)
本装置は、非破壊的な測定ができるのが特徴であり、X線が貫通できる試料の厚みは鉄換算で40mm、アルミ換算で200mmとなります。 その試料中の、大きさ10μmφ以上の“異物”(引け巣、ブローホール、内部欠陥等)の同定が可能です。
材料や機械部品のX線CTの測定目的は多岐にわたりますが、大別して以下の2つがあります。
図A セラミックス多孔体材料の断層像(3次元像の1断面)
図AはマイクロフォーカスX線CT法で測定したセラミックス多孔体材料の断層像(3次元像の1断面)の例です。
・黒い部分は空隙(孔)
・灰色の部分が母相(セメントバインダー)
・白い部分は鉱物
たくさんの空隙があり、その位置や大きさもいろいろであることがわかります。
図B 空隙の3次元解析を行った例(VG STUDIO MAX 3.2を使用)
空隙の位置や大きさは3次元構造解析ソフトを使うと“定量的に”解析することができます。
図Bはその一例で、空隙体積の大きさで色分けしたものです。(外部と繋がっている空隙(黒)は解析対象から除外しています)。
図Bに示した検出された空隙の3次元解析結果から、空隙の位置や空隙毎の体積などを計算で求めることができます。
表1にはその一例として、空隙毎の中心座標、体積、球相当直径、外接球直径の解析結果を示します。
表1 検出された空隙毎の解析結果
表1に示した空隙毎の解析結果から、色々な“統計的な量”を計算することができます。表2にはその一例として、空隙の全体積、母相の体積、空隙率の計算結果を示します。
表2 統計量として算出した空隙率
図C 空隙体積(外接球直径)分布ヒストグラム
(色分けは図Bと同じ)
表1に示した空隙毎の解析結果から、“統計的な評価“として、どのような大きさの体積の空隙が多いのかを示す空隙体積分布ヒストグラムが作成できます(図C)。図Bでは大きな空隙が目立ちますが、実は小さな空隙の(<1mmφ)の方が、数は圧倒的に多いことがわかります。
この他に、各空隙間距離の2体相関関数などの解析により、空隙が材料中の特定の位置に集まっているのか、またはバラバラに存在するのかを定量的に評価することも可能です。