継手溶接部近傍(溶接金属部及び母材溶接熱影響部)に生じる割れを大別するとその発生時期によって高温割れと低温割れに分類されます。ここでは高温割れ及び低温割れの割れ感受性評価試験方法の事例として(1)バレストレイン試験(高温割れ評価試験)、(2)y形拘束割れ試験(低温割れ評価)、(3)最高硬さ試験(低温割れ評価)について紹介します。
高温割れ評価試験方法の1つで、TIG溶接中の試験片に対して外部から応力を負荷し、試験片に瞬間的に曲げ変形(歪み)を与えて強制的に高温割れを発生させ、溶接金属表面に認められる割れ長さを測定する試験方法です。指標としては最大割れ長さ、総割れ長さを用いるのが一般的です。
バレストレイン試験装置の概略図
割れ発生形態の例図
低温割れ評価試験方法の一つで、下図に示すような開先形状の試験板のルート部に試験ビードを溶接し、48時間以上経過後試験ビード表面及び断面の割れの有無、割れ率(割れ長さの比率)を求める試験方法です。
y形拘束割れ試験の試験片形状
割れ測定状況
低温割れが発生する要因の一つとして溶接部近傍の硬化が挙げられます。継手溶接部近傍の硬さを低温割れ感受性の指標として測定する試験方法が最高硬さ試験となります。下図に示すような試験材に試験ビードを溶接し12時間以上経過後溶接部断面の試験片を採取してビッカース硬さを測定し測定値のうち最も大きい値を最高硬さとするものです。
項目 | L | W | l | t | 備考 |
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1号試験片 | 約200mm | 約75mm | 125mm | 20mm(20mm以下の場合は原厚まま) | 室温溶接用 |
2号試験片 | 約200mm | 約150mm | 125mm | 20mm(20mm以下の場合は原厚まま) | 予熱溶接用 |
最高硬さ試験片及び硬さ測定位置概略図