半導体素子や表示素子など、さまざまな製品で保護膜や絶縁層として使用されている絶縁体膜は、製品の微細化や高速化に伴い、その誘電特性も製品の特性や信頼性に対する影響が大きく、その評価は重要になっています。
当チームでは、各種無機材料、有機材料などさまざまな絶縁膜の誘電特性を評価し、お客様の材料選択や製膜条件の最適化のお手伝いをいたします。
装置名
アジレント社 HP-4192A LF インピーダンスアナライザー
測定周波数帯域
5Hz~13MHz
直流バイアス電圧印加範囲
-35V~+35V
測定パラメータ
Z, θ, C, D(tanδ), L, R, Q
絶縁膜の特性評価ではSi基板がしばしば使用されます。絶縁膜の上部に電極を形成し、電極とSi基板間で比誘電率を測定しますが、その際Si基板に空乏層が形成され、上図左に示しますようにその容量成分Csが直列に加わることがあります。
そのため、正負の直流バイアス電圧を印加し、空乏層ができない条件で測定することが必要です。
上図はN型のSiを使用した場合ですが、電極側に正のバイアス電圧を印加しますと、空乏層がなくなり、絶縁膜だけの容量Ciが得られます。
一方、負のバイアス電圧印加で得られた容量値から空乏層の容量Csが求められます。上図の場合、Cs=327pF、Siの比誘電率=11.8より空乏層厚みは322nmと推定されます。
この例では基板にP型Siを使用したため、バイアス電圧が負の場合に空乏層がなくなっています。窒化珪素膜が前述のSiO2膜と大きく異なる点はバイアス電圧の増加時と減少時でCのプロファイルが変化する、すなわち、空乏層ができる電圧と消失する電圧が異なる点です。
これは、窒化珪素膜ではSiとの界面に不純物あるいは欠陥等による準位が存在するためと考えられます。酸化珪素をベースとした塗布型のPSG膜などでも、同様の特性を示す場合が見られます。
界面の不純物や欠陥は、半導体素子の信頼性に影響する場合があり、絶縁材料ごとにC-V特性を評価し、製膜条件を最適化することは非常に重要です。
絶縁膜によっては吸湿しやすいものがあり、吸湿により見かけ上の比誘電率の値が変化します。吸湿の度合いが大きいほどその変化は大きくなりますので、絶縁膜の吸湿性の評価においても本測定は大変有用です。
また、恒温槽内に試料を設置し、温度依存性やキュリー温度を測定することも可能です。