海岸地帯で使用されたSUS309S製ゴミ焼却炉の部品
外観
一部が損耗・脱落、表面には褐色の付着物あり、板厚も局部的に減肉しています。
材料の化学組成(wt%)
規格値内に合致している事を確認しました。
C | Si | Mn | P | S | Ni | Cr | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
分析値 | 0.03 | 0.45 | 0.67 | 0.031 | 0.003 | 12.3 | 24.2 |
鋼材断面の金属組織(写真1)
(1)粒界酸化を伴う激しい高温腐食を受けています。
(2)結晶粒の異常成長はありません。
(3)粒界にCr炭化物の析出が認められ、その分散程度から部品の温度は750℃程度と推定されます。異常高温になった形跡はありません。
EPMAによる粒界腐食部の解析(写真2)
(1)粒界から高濃度のO・Cl・Sが検出されました。
(2)表面付着物からも高濃度のO・Cl・Sが検出されました。
材料は規格内の物が使用されており、結晶粒の異常成長もありません。
粒界のCr炭化物の分散程度から部品の温度は750℃程度です。
特別に高温になったわけではありません。
過酷な高温腐食に耐えるステンレス材料は無く、セラミック溶射材なら高価です。
しかし、耐食効果は若干期待できます。従って定期的に検査を行い部品交換する方が得策です。
写真1.部品断面の金属組織
写真2.粒界侵食部のEPMAによる特性X線像
(粒界侵食部の先端付近)