水が関与する金属の腐食では、陽極反応(金属がイオンとなって溶解する酸化反応)と陰極反応(水素または酸素の還元反応)とが同時に進行する電気化学反応が起こります。したがって、電気化学試験によって腐食原因の解明や防食方法の検討を行うことが出来ます。
装置の概略は図1に示すように、試験片と照合電極との間にポテンシオスタットで一定の走査速度で電位を上昇または下降させ、試験片と対極との間に電圧と流れる電流を測定することで分極曲線を得ます。
図1 装置概略
写真1 装置写真
分極曲線の例は図2に示すようになります。この曲線は液の組成と試験片の材料組成によって変化します。
図2 分極曲線の例
全面腐食や孔食・応力腐食割れ・水素脆性割れなどの局部腐食は、それぞれ特定の電位域で発生します。そのため腐食を起こした現場からプロセス液を採取し、その液と使われている材料と同じ材料で分極曲線を測定することで、現場での状況を推定することが可能になります。
ただ、プラントの重大なトラブルにつながる腐食割れの原因が、応力腐食割れ(SCC)か、それとも水素脆性割れ(HE)であるか特定出来ないことがあります。このような場合、実際のプロセス液と腐食割れを起こした材料(または相当材)とを用い、電位付加定荷重試験を行うことにより割れ原因を特定することが可能です。
即ち、図3に示すように、電位を下げた場合に破断時間が短くなる場合は水素脆性割れであり、逆に電位を上げると破断時間が短くなる場合は応力腐食割れと特定できます。
このように電気化学試験で腐食の生じた状況を推定し、さらには防食技術につなげていくことが可能となります。
図3 電位付加定荷重試験による腐食割れ原因の特定