企業知財業務の魅力ランキングと私の知財業務

2024年3月4日 T.S

 私は、富津知的財産推進センターという部署に所属し、日本製鉄(株)の研究部門の発明を出願・権利化する知財業務を行っています。
 今回は、「知財管理」という知財専門誌で報告された「知財の魅力」を、私の知財業務に照らし合わせることで、当社の知財業務の魅力をご紹介いたします。
 「知財管理」は、「日本知的財産協会の機関誌であり、会員相互の研鑽・交流情報誌としての役割を持つとともに、専門性の高い論文や企業における最新の知的財産活動を掲載する知的財産関係の専門誌」※1 です。その「知財管理」(vol. 72 No.1 2022)の「知財業務・組織・人材の魅力に関する研究」※2 という論説で、「知財の魅力」について、面白いアンケート結果が記載されていました。そのアンケート結果を基に、知財の魅力を順位付けすると、企業知財業務の魅力は、以下のランキングとなります。また、ランキングのそれぞれの項目について、私の知財業務に照らし合わせてみました。

 アンケートは、執筆者である小委員会が予め設定した15項目について、「非常に魅力を感じる」、「どちらかといえば魅力を感じる」、「どちらともいえない」、「どちらかといえば魅力を感じない」、「全く魅力を感じない」の5項目の回答で実施された。アンケート対象者は、知財業務経験が5年未満の知財部員(新卒、異動問わず)であり、マネジメント委員会内の会員企業の147名である。順位付けは、「非常に魅力を感じる」および「どちらかといえば魅力を感じる」の回答の合計割合が高い順とした。

「1位:論理的思考力を伸ばせる」
 論理的思考力とは、「物事を全体的に捉えて要素ごとに分解し、論理の矛盾や飛躍がないように要素を組み合わせたり、筋道立てて整理したりする考え方」※3 であり、ビジネスにおいて重要とされる能力です。実際に、私の業務においても論理的思考力を駆使することが多く、日々鍛えられていると感じます。例えば、実験データ、先行技術文献や事業方針などの複数の情報を鑑みて出願方針を提案したり、審査時の拒絶理由への反論(審査時に提示された先行文献に対して発明が如何に優れているかを主張したり、審査時に提示された先行文献が不適切であることを主張したりする反論)を検討したりする際に、論理的思考力を駆使していると感じます。また、上手く対応できたときは達成感があり、論理的思考力を駆使し、それを日々研鑽することは、当社における知財業務においても魅力かもしれません。

「2位:無形資産を明確な権利にすることで事業に貢献できる」
 自社の発明を守るためや自社の発明により利益を得るために、知財業務は非常に重要であり、事業に大きく貢献することができます。私の業務でも、日本製鉄(株)の研究部門、知財部門と協働して、事業の発展のためにどのような出願をすべきかを検討しています。その出願の準備や権利化に、私の知財業務が大きく寄与しています。重要な権利を取得できた際は、大きく事業に貢献できたと感じることができ、やりがいを感じています。

「3位:リモートでの業務遂行がしやすい」
 実際にリモートで業務ができるかは所属する会社によると思いますが、知財業務自体はパソコンとインターネット環境さえがあれば遂行できる場合が多いです。当社の知財部門は、出社と在宅のハイブリッド勤務であり、ある程度自由に在宅勤務をすることが可能です。実際、私も週3~4日の頻度で在宅勤務をしており、在宅勤務日は子供の保育園の送迎をしています。在宅勤務のおかげで、ライフワークバランスが向上していると実感しており、リモートで業務ができる点は、当社の知財業務の大きな魅力だと考えます。

「4位:社内の各事業分野の最新技術に関わることができる」
 当然ですが、新しい発明を出願するため、知財業務は最新技術に関することが多いです。私は、最新の技術に関わることができることが、知財業務の一番の魅力だと思います。私の業務では、研究部門から直接ヒアリングを実施し、発明を知財化します。サンプルや実験設備を見せていただくこともあり、楽しみながら業務を遂行しています。また、複数の分野を担当しており、様々なテーマの最新技術に携わることができることも、仕事のモチベーションになっています。

「5位:業務・時間の裁量権が大きい」
 知財業務は、個人で遂行するものが多いです。法的期限や社内期限などの〆切のようなものもありますが、業務スケジュールを調整しやすいため、年次有給休暇やフレックスタイム制を利用しやすいと思います。私の業務では、年度末が繁忙期になる傾向がありますが、それ以外であれば、スケジュールを調整しやすく、自由に年次有給休暇を取得しやすいです。また、フレックスタイム制を利用して、朝早めに仕事を始め、早退することもよくあり、自由な働き方ができていると感じます。

 最後に、今回は、知財専門誌「知財管理」で報告された「知財の魅力」を私の業務に照らしあわせて、当社の知財業務の魅力をご紹介いたしました。当社の知財業務は、「最新技術に触れながら、事業にも大きく貢献でき、かつ、場所・時間的に自由な働き方ができる業務」であることが魅力であると実感しています。本コラムを読んで、知財の魅力、当社での働き方に興味を持っていただけましたら幸いです。