調べて、対話して、考える

2024年1月25日 T.H

 私が所属する西日本知的財産推進部では、「発明発掘」「出願書類作成支援」「中間対応」を中心に、特許をはじめとした知的財産に関する様々な業務を行っています。
 今回はそのうち、「発明発掘」「中間対応」の業務について紹介します。

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【発明発掘】
 研究者や技術者(以下「発明者」)と対話し、研究成果等の中から「発明」つまり特許の保護対象となるものを特定(発掘)します。
 研究は何らかの課題を前提として遂行されますので、課題は何か、その課題をどのように解決したかを発明者からヒアリングします。そして、研究成果と既に世に出ている技術(先行技術)とを比較し、研究成果の中で新しい構成が何であるかを特定します。
 また、特許法において「発明」が「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義されている(※1)ように、特許の保護対象は「技術的思想の創作」です。
 そのため、研究成果から特定した構成以外に同様の思想により課題を解決できる構成がないか発明者と対話し、アイディアを広げることもあります。
 発明発掘のためには、対象技術分野の知識や先行技術を把握する事のほか、対話力や想像力が必要となります。十分な下準備をしたうえで発明者と対話し、発明者が気付いていない発明を掘り出す事はこの仕事の面白さのひとつだと思います。

【中間対応】
 特許出願した後は、特許庁による審査が行われます。審査の結果、出願に不備があった場合は、特許庁から出願人に対して拒絶理由が通知され、補正書および意見書の提出機会が与えられます。補正では出願書類について訂正や補充を行います。また、指摘された不備に対して意見書を提出し反論することで拒絶理由の解消を図ります。
 そして、出願人による補正や意見の結果、拒絶理由が解消されたと認められれば、特許権を取得する事ができます。
 中間対応では、特許庁から通知された拒絶理由を解消するための適切な対応を考えます。具体的には拒絶理由の意図を正確に読み取り、審査基準や判例等も踏まえながら、補正および意見書の内容を検討します。必要に応じて発明者や弁理士とも相談します。
 また対応によって権利化が成功した場合でも、補正により扱いづらい権利になることは望ましくありません。そのため、どこまで補正すれば拒絶理由が解消されるか、拒絶理由や発明内容を十分に理解して見極めることも必要です。
 中間対応では上記の事項を担当者自身が主体的に考えることになります。中間対応は知財担当の腕の見せ所のひとつであり、厳しい拒絶理由を乗り越え望ましい形で権利を取得できた時の達成感は格別です。

 さて、ここまで読んで頂き何だか大変そうに感じたかもしれませんが、心配は要りません。
 業務遂行に必要な知識は研修や実務を通して学ぶことができます。そして仕事は決して一人きりで進めるものではなく、困った時には経験豊富で様々な専門性を持った先輩方が色々な場面で力添えしてくれます。
 私自身、新卒で当社に入った時は全くの素人でしたが、研修や書籍で勉強したり、指導担当や他の先輩方に助言頂いたりして必要な知識やスキルを身に着けてきました。入社8年目の現在でも、必要に応じて上司や先輩方と相談しながら日々の業務を行っています。

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 今回紹介した以外にも知財業務は様々ありますが、本稿が仕事のイメージをつかむ一助になりましたら幸いです。