特許調査のお仕事
~新米知的財産部員が語るその魅力~

2023年5月24日 M.K

“この一本のペットボトル飲料。
ここにどれだけの権利が含まれているかご存じですか?
商品名などの商標 お茶の焙煎方法や抽出技術などの特許 パッケージデザインの意匠。
こういった価値のあるアイデアや創作物を総称して「知的財産」と呼びます。“ 1)

これは現在放送中のドラマ「それってパクリじゃないですか?」第一話で、ジャニーズWESTの重岡大毅さん演じる、弁理士の北脇雅美が放ったセリフです。
 「知的財産って聞いたことはあるけど、具体的にどんなものがあるかは知らない」、「身近にはないと感じる」という方は多いかもしれません。実は、このセリフにもあるように、あなたが手に取る一本のペットボトル飲料にも知的財産が詰まっているのです。
 また、このコラムを読んでくださっている方は、スマートフォン、パソコン、タブレット端末のいずれかを使用しておられるかと思いますが、それらにも、同様に知的財産が詰まっています。そしてこの知的財産の価値は、知的財産権2)によって保障されています。
 知的財産権には、具体的に以下のようなものがあります。
発明(技術や物)を保護する特許権・実用新案権、社名や商品名などブランドを保護する商標権、デザインを保護する意匠権、絵や文章などの創作物(著作物)を保護する著作権、植物の新品種を保護する育成者権です。
 その中でも筆者は特許権に関わる仕事をしています。
 特許権は、発明を言葉で表現し、その言葉で表現された内容を自身の権利として主張することができます。権利を取得するには、発明を言葉で表現した書類を特許庁に出願し、審査の結果、特許すべきものとして認められなければなりません。3)
 特許として認められるために必要な条件として特に重要なことが二点あります。

 ・新しい発明であること(新規性)
 ・既存の技術の組み合わせから容易に考え出すことができない発明であること(進歩性)
 新規性という言葉は、理系で研究に取り組んでいる学生の方の中には聞き馴染みがある方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、発明が特許として認められるためには、過去の技術と同一ではないこと(新規性)に加えて、さらに既存の技術の組み合わせから容易に思いつくものではない(進歩性)という条件が必要になります。
 筆者の業務においては、研究者が生み出した発明を言葉で表現した内容について、その内容の新規性と進歩性を調査しています。実際には、特許を取りたい最新技術の内容を理解し、調べ上げた情報に基づいて、従来の技術との違いが本当にあるかどうか、論理を組み上げていきます。そこに、まるでパズルを解くような面白さを感じています。
 理系大学生・大学院生の方々のなかには、就職活動をするにあたり、研究開発職でしか力を発揮できないのではないかと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなことはありません。知的財産の中でもこの最新技術に触れ、論理を重視する特許に関する仕事は、理系としての素養が強い武器になります。4)また、仕事で携わる技術分野として、材料分野だけでも鉄に限らず、電子材料や高分子、セラミックスといった様々な材料、ひいては機械学習などの最先端技術分野に触れる機会があり、対象とする事業範囲は、身の回りのことからインフラ・工場といった社会を支え発展させていく重要な役割を担っています。
 そして、特許調査の仕事を通じて、発明を特許権という財産の形にして守るために、発明者や出願に携わる知財担当者に対して第三者の視点から助言をし、発明をより強い権利の形にするために自身の調査結果が反映された時の達成感は何にも代えがたいです。
 仕事自体も魅力にあふれていますが、加えて働く環境として筆者の勤務している本社オフィスは、東京駅から徒歩数分の好立地にあります。少し歩くと複数の劇場もあり、仕事帰りに推しが出演する舞台を観に行くといった推し活を満喫する社員もいます。筆者自身としては、冬の時期に、東京駅周辺のイルミネーションで癒されつつショッピングをして帰るのがお気に入りです。また、日が伸びてきたこの頃は、定時で上がった後に、皇居外苑の自然を眺めながら皇居ランにいそしみ、伸び伸びと日々を過ごしています。
 最先端の技術に触れる特許の仕事で、理系としての素養を発揮しながら、好立地な環境でワークライフバランスを充実させた生活を送ってみませんか?